リスキリングで個人が使える補助金・給付金は、学費が戻る「教育訓練給付(20〜80%)」と、学ぶ間の生活費を支える給付に大きく分かれます。どれを使えるかは雇用保険の加入状況と在職・離職の別で決まります。
この記事でわかること
- 個人が使えるリスキリングの補助金・給付金5制度の全体マップ(事業者向け助成金は除く)
- 在職者・離職者・雇用保険に入っていない人で使える制度がどう変わるか
- 教育訓練給付3区分の給付率・上限額・加入期間の条件
- 学費だけでなく学ぶ間の生活費を支える給付(教育訓練休暇給付金・教育訓練支援給付金・職業訓練受講給付金)
- 申し込む前に確認すべき受講前手続きと併給の注意点
公的情報源: ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付制度」(参照)/厚生労働省「教育訓練給付制度」(参照)/厚生労働省「令和7年10月から教育訓練休暇給付金が創設されます」(参照)/いずれも2026年7月時点
結論を先に書きます
個人向けの支援は数多くあるように見えて、実際に選べる制度はあなたの雇用保険の状況でほぼ決まります。在職中で雇用保険に入っているなら教育訓練給付が本命。雇用保険を受けられない立場なら求職者支援制度が入口になります。
もう一つの分け方が、お金の出方です。受講料が後から戻る給付と、学ぶ期間の生活費を支える給付は別物。両者を混同すると「思ったより手元が苦しい」という事態になります。
- 個人向けの柱は教育訓練給付(一般20%・特定一般40〜50%・専門実践50〜80%)
- 教育訓練給付は雇用保険の加入期間(初回1〜2年以上)が条件。離職者は原則、離職日の翌日から1年以内の受講開始
- 生活費側は教育訓練休暇給付金(2025年10月創設)・教育訓練支援給付金・職業訓練受講給付金
- 雇用保険を受けられない人は求職者支援制度(受講料無料+要件を満たせば月10万円)
- 特定一般・専門実践は受講前の手続きが必須。後から遡って申請できない
この記事は個人が使える制度に絞ります。人材開発支援助成金のような事業者向けの助成金は扱いません。
個人が使えるリスキリング補助金・給付金の全体マップ
まず全体像です。個人向けの公的支援は「学費が戻るもの」と「学ぶ間の生活費を支えるもの」の2系統に分かれます。

個人向けリスキリング支援 5制度の比較(2026年7月時点)
| 制度 | 所管 | 支援の中身 | 主な対象者 |
|---|---|---|---|
| 教育訓練給付 | 厚生労働省 | 受講料の20%/40〜50%/50〜80%を支給 | 雇用保険の被保険者・一定期間内の離職者 |
| 教育訓練休暇給付金 | 厚生労働省 | 無給休暇中の生活費(基本手当に相当する給付) | 在職者(30日以上の無給教育訓練休暇を取得) |
| 教育訓練支援給付金 | 厚生労働省 | 基本手当日額の60%(暫定措置) | 45歳未満の離職者で専門実践を昼間通学 |
| 求職者支援制度 | 厚生労働省 | 受講料無料+月10万円(要件を満たす場合) | 雇用保険を受給できない求職者 |
| リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 経済産業省 | 講座費用等の補助(転職を伴う支援) | 在職者(採択事業者のサービスを利用) |
※支援の中身は制度の代表的な内容を要約したものです。金額・要件は改定されることがあり、適用可否は個別の状況で変わります。
事業者向けの助成金(人材開発支援助成金など)を個人が直接申請することはできません。個人が動かせるのは上の5つと、自治体独自の職業訓練・講座支援になります。
自分が使える制度を絞り込む|雇用保険の状況で決まる
制度を一つずつ調べる前に、自分の立場で候補を絞るほうが早く進みます。分岐は3つです。

在職中で雇用保険に加入している人
本命は教育訓練給付です。働きながら講座を受け、受講料の一部が戻ります。長期の休みを取って学ぶなら、2025年10月に創設された教育訓練休暇給付金が生活費側を支えます。
さらに転職を前提に学ぶなら、経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業も候補になります。
この事業は在職者が対象。キャリア相談・講座受講・転職支援がセットになっている点が教育訓練給付と異なります。制度の中身はリスキリング補助金(キャリアアップ支援事業)で詳しく扱っています。
離職して求職中の人
雇用保険の基本手当を受けているなら、公共職業訓練(ハロートレーニング)が受講料無料で使えます。教育訓練給付も、原則として離職日の翌日から1年以内に受講を開始すれば対象になり得ます。
45歳未満で専門実践教育訓練を昼間通学する場合は、教育訓練支援給付金(基本手当日額の60%)という上乗せもあります。ただしこれは令和8年度末までの暫定措置とされており、期限がある点に注意が必要です。
雇用保険を受けられない人
自営業だった人、加入期間が足りない人、パート・アルバイトで対象外だった人は、求職者支援制度が入口です。受講料は無料(テキスト代等は自己負担)で、収入・資産などの要件を満たせば月10万円の職業訓練受講給付金が支給されます。
要件は本人の収入や世帯の状況で細かく決まっており、満たすかどうかはハローワークの判断になります。自己判断せず窓口で確認してください。
教育訓練給付の3区分|給付率と加入期間の条件
個人向けの中心である教育訓練給付を、もう一段深く見ていきます。ポイントは給付率は講座に紐づき、受給資格は本人に紐づくという二重構造です。

給付率・上限額(2026年7月時点)
| 区分 | 給付率 | 上限額 | 支給の下限 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% | 10万円 | 4千円を超えない場合は不支給 |
| 特定一般教育訓練 | 40%(資格取得+就職で50%) | 20万円(就職で25万円) | 同上 |
| 専門実践教育訓練 | 50%→70%→80% | 年間40/56/64万円(最大3年で192万円) | 同上 |
雇用保険の支給要件期間(ハローワークインターネットサービス・2026年7月時点)
| 区分 | 初めて受給する場合 | 2回目以降 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 1年以上 | 3年以上 |
| 特定一般教育訓練 | 1年以上 | 3年以上 |
| 専門実践教育訓練 | 2年以上 | 3年以上 |
つまり、在職1年に満たない人は教育訓練給付の対象外になる可能性が高いということ。転職直後にリスキリングを考えている人は、まず自分の加入期間を確認するのが先になります。加入期間の照会もハローワークで可能です。
給付率が高い専門実践は条件も重い
専門実践の80%は自動では届きません。受講中50%→資格取得と就職で70%→賃金が5%以上上がって80%という3段階の積み上げです。修了しても就職しなければ50%にとどまります。
どの講座が専門実践の指定かは、厚生労働省の教育訓練給付制度 検索システムで「訓練種別」を絞れば確認できます。講座サイトの「給付対象」表記だけで判断しないのが安全です。実額の試算や対象講座の見分け方は専門実践教育訓練給付金で学ぶ講座の選び方にまとめています。
給付率で実質負担はどれだけ変わるか
同じ30万円の講座でも、指定区分が違えば手元から出る額は大きく変わります。制度上の計算例で比較します。

受講料30万円・1年の講座の場合(制度上の計算例)
| 区分 | 戻る額(目安) | 実質負担(目安) |
|---|---|---|
| 給付なし | 0円 | 30万円 |
| 一般教育訓練(20%) | 6万円 | 24万円 |
| 専門実践・受講中のみ(50%) | 15万円 | 15万円 |
| 専門実践・80%まで到達 | 24万円 | 6万円 |
数字は制度上の計算例です。実際の支給額は教育訓練経費の範囲・修了状況・上限額によって変わります。入学金や受講料のうち、どこまでが教育訓練経費に含まれるかも講座ごとに異なるため、確定額は受講前にハローワークで確認してください。
申し込む前に確認する3点|手続きと併給の注意
制度を知っていても、順番を間違えると受けられません。特に事前手続きは取り返しがつかない部分です。
- 受講前の手続きが必要な制度か(特定一般・専門実践は必須)
- 自分の加入期間・離職からの経過期間が条件を満たすか
- 複数の支援を同じ講座に重ねられるか
1.受講前手続きは後から遡れない
特定一般教育訓練と専門実践教育訓練は、訓練前キャリアコンサルティングを受けてジョブ・カードを作成し、受講開始日の2週間前までにハローワークで受給資格確認を行う必要があります(ハローワークインターネットサービス・2026年7月時点)。
キャリアコンサルティングは予約制で、希望日にすぐ受けられるとは限りません。講座の申し込みと同時に、キャリアコンサルティングの予約を取るくらいの時間感覚が現実的です。手続きの詳細な流れは専門実践給付金の記事もあわせて確認してください。
2.加入期間と離職からの経過期間
在職者は加入期間、離職者は離職日の翌日から受講開始日までが1年以内かどうかが分かれ目です。妊娠・出産・疾病などの理由で受講できない期間があった場合は、適用対象期間の延長が認められる場合があります。該当しそうなら早めにハローワークへ相談してください。
3.併給の可否は制度ごとに違う
同じ講座に複数の公的支援を重ねられるとは限りません。制度ごとに併給の扱いが定められているため、複数制度の利用を考えている場合は、申し込み前に各制度の窓口で確認するのが安全です。ここは自己判断で進めると後から支給されないリスクがあります。
リスキリング支援を使いやすい人・確認が必要な人
制度が合うかどうかは、置かれている状況で変わります。
- 在職3年以上で雇用保険に継続加入している人:教育訓練給付の要件を満たしやすい
- 転職を前提に学びたい在職者:専門実践の70〜80%や経産省の支援事業と噛み合う
- 雇用保険を受けられない求職者:求職者支援制度で受講料の負担なく始められる場合がある
- 加入期間が1年未満の人:教育訓練給付の対象外になる可能性が高い
- すでに受講を始めてしまった人:事前手続きが要る制度は遡って申請できない
- 短期・低額の講座で足りる人:手続きの手間に対して戻る額が小さいこともある
要件の判定は個別性が高い領域です。最終的な適用可否は、住所地を管轄するハローワークで確認してください。
よくある質問
個人向けのリスキリング支援について、相談の多い質問を整理します。
Q1:リスキリングの補助金は個人でも申請できますか?
できます。個人が直接使えるのは教育訓練給付・教育訓練休暇給付金・教育訓練支援給付金・求職者支援制度などです。人材開発支援助成金のような事業者向けの助成金は、企業が申請するもので個人は直接申請できません。
Q2:働きながらでも給付金は使えますか?
使えます。教育訓練給付は在職者が主な対象で、オンライン・夜間・土日の指定講座も拡充されています。長期の休暇を取って学ぶ場合は、2025年10月創設の教育訓練休暇給付金が生活費側を支える仕組みです。
Q3:雇用保険に入っていなくても使える制度はありますか?
あります。雇用保険を受給できない求職者向けに求職者支援制度があり、受講料は無料(テキスト代等は別)です。収入・資産などの要件を満たせば月10万円の職業訓練受講給付金が支給されます。要件の判定はハローワークで確認してください。
Q4:教育訓練給付は何年働いていれば使えますか?
初めて受給する場合は、一般・特定一般が支給要件期間1年以上、専門実践が2年以上とされています(2回目以降はいずれも3年以上)。転職直後は要件を満たさないことがあるため、自分の加入期間をハローワークで確認するのが確実です。
Q5:講座を申し込んだ後でも給付の手続きはできますか?
制度によります。特定一般・専門実践は受講開始日の2週間前までに受給資格確認が必要で、開始後に遡って申請することはできません。申し込みと並行して、訓練前キャリアコンサルティングの予約を進めるのが安全です。
Q6:複数の支援制度を同じ講座で併用できますか?
併給の扱いは制度ごとに定められており、同じ講座に自由に重ねられるわけではありません。複数の制度を検討している場合は、申し込み前に各制度の窓口(ハローワーク・事業事務局)で確認してください。
まとめ:自分の立場に合う制度から確認する
個人向けのリスキリング支援は、数を覚えるより自分がどこに当てはまるかを先に決めるほうが早く進みます。
- 支援は学費が戻る系と生活費を支える系の2つに分かれる
- 在職者の本命は教育訓練給付(20〜80%)。加入期間は初回1〜2年以上が目安
- 離職者は1年以内の受講開始が条件。45歳未満の専門実践なら支援給付金の上乗せも
- 雇用保険を受けられないなら求職者支援制度が入口
- 特定一般・専門実践は受講2週間前までの受給資格確認が必須。遡って申請はできない
制度の当たりがついたら、次は対象講座の確認です。給付対象かどうかは検索システムで、実際の適用可否はハローワークで確かめながら進めてみてください。
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免責事項
※本記事は教育訓練給付制度をはじめとする公的支援の公開情報をもとにした整理です(2026年7月時点)。給付率・上限額・対象者・受給条件・併給の可否は制度改定や個人の状況により異なり、支給を保証するものではありません。最新の条件および適用可否は厚生労働省・経済産業省の各制度案内および住所地を管轄するハローワークでご確認ください。
